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【パブリックコメント】東京都オリンピック人権条例の「公の施設の利用制限に関する基準案について」(2月10日まで)

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概要と問題点

はじめに

 ヘイトスピーチ解消法が施行された後のいま現在も、執拗に行われているヘイトスピーチ(差別扇動)を伴うデモや街頭宣伝を、短い動画にまとめています。

 下のリンク先に掲載している動画を1つでも見ていただければ、なぜ法律や条例が必要なのかを理解していただけると思いますので、ぜひ1度ご覧ください。宜しくお願いいたします。

【閲覧注意】[動画]現在も続く街頭でのヘイト(差別扇動)スピーチ、ジェノサイド(大量虐殺)スピーチ
https://antiracism-proj.org/hatevideo/

概要

 2019年(1月10日~)2月10日まで、東京都のオリンピック憲章に基づく人権条例の「公の施設の利用制限に関する基準案」について、パブリックコメントを募集しています。

 以下に概要と問題点を記しますので、参考にしていただければ幸いです。

東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例第11条に規定する公の施設の利用制限に関する基準案について 2019年01月10日  総務局

東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例第11条に規定する公の施設の利用制限に関する基準案(以下「基準案」といいます。)(別紙(PDF:386KB))について、広く都民の皆様からの意見を募集します。

ウ Eメール
ikenboshu-jinken(at)section.metro.tokyo.jp

※迷惑メール対策のため、メールアドレスの表記を変更しております。お手数ですが、(at)を@に置き換えてご利用ください。

※件名は「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例第11条に規定する公の施設の利用制限に関する基準案への意見」としてください。

※Eメール本文に以下の事項を記入の上、提出してください。

氏名(名称)及び住所(所在地)

該当箇所・意見内容・理由

(添付ファイル(別紙「意見提出用紙」)による意見の提出は御遠慮ください。データファイル等を添付された場合、情報セキュリティの都合上、開封いたしません。)

問題点

 提示されている「公の施設の利用制限に関する基準案」には、大きな問題点が1つあります。

東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現を目指す条例第11条に規定する公の施設利用制限に関する基準(案) (PDF)

2 利用制限の要件

以下2つの要件を両方満たし場合に、利用制限行うことができるもす。 以下2つの要件を両方満たし場合に、利用制限行うことができるものとする。

① ヘイトスピーチ (注1) が行われる 蓋然性が高いこと

② ヘイトスピーチが行われることに起因して発生する紛争等より、施設の安全な管理に支障が生じる事態が予測されること(注2)

 それは、利用制限を満たすための基準の項目2に、いわゆる「迷惑要件」(「施設の安全な管理に支障が生じる事態が予測されること」)が入っているため、このままでは「ヘイトスピーチが行われる蓋然性が高いこと」が認められても、項目2の「迷惑要件」にも該当しなければ、「ヘイトスピーチが行われる蓋然性が高い」にも関わらず、施設は貸し出されてしまいます。

 項目2の「迷惑要件」は、非常にハードルが高く、そして基準も曖昧であるため、項目1の「言動要件」が満たされても、項目2の「迷惑要件」を満たすような状況が訪れる事は、はっきりいうと未来永劫ないでしょう。

 京都府や京都市のガイドラインでは、言動要件か迷惑要件のどちらかを満たせば良いものとなっています。

 

  • 「京都府公の施設等におけるヘイトスピーチ防止のための使用手続に関するガイドライン」(PDF)
  • ヘイトスピーチ解消法を踏まえた京都市の公の施設等の使用手続に関するガイドラインの策定について
  • ヘイトスピーチ解消法を踏まえた京都市の公の施設等の使用手続に関するガイドライン(PDF)

     東京都と同様のガイドラインを制定している川崎市では、市長の詰問機関の部会長が、「市の施設利用を事前規制する現在のガイドラインでは、きちんとヘイトに向き合えない」とし、「実効性を高めるため早期改定の必要性」を訴えています。

    ヘイトスピーチ対策、早期改定を 川崎市の諮問機関トップ 2018年12月11日 共同通信

    川崎市長の諮問機関「ヘイトスピーチに関する部会」の部会長を務める阿部浩己・明治学院大教授(国際法)は、11日までに取材に応じ「市の施設利用を事前規制する現在のガイドラインでは、きちんとヘイトに向き合えない」と述べ、実効性を高めるため早期改定の必要性を訴えた。

  • 川崎市「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に基づく「公の施設」利用許可に関するガイドライン」
  •  ヘイトスピーチに対処する条例やガイドラインの現在の状況を全く反映せず、現実を無視した要件設定は、この条例の11条の存在意義すら問われかねません。

    東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現を目指す条例

    第 11 条 知事は、公の施設において不当な差別的言動が行われることを防止するため、公の施設の利用制限について基準を定めるものとする。

     この要件では、「公の施設において不当な差別的言動が行われることを防止する」ことは出来ません。

     要件2の「迷惑要件」を外すか、もしくは、要件1(言動要件)か要件2(迷惑要件)のどちらかを満たせば、利用を制限できる基準にしなければなりません。 

    まとめ

    [意見]

    「利用制限の要件」の項目2(迷惑要件)を外すか、要件1の言動要件か要件2の迷惑要件のどちらかを満たせば、公的施設の利用制限が可能な内容に修正する

    [理由]

    ・要件2の「迷惑要件」が必須要件である限り、どれだけ酷く悪質な「ヘイトスピーチが行われる蓋然性が高」くても、施設が貸し出されてしまう

    ・該当項目が修正されなければ、人種差別撤廃条約の第4条(C)及び、東京都の該当条例の11条に基づかず、全く実効性のないものになる

    ・川崎市のガイドライン制定後に、京都府や京都市で制定されたガイドラインでは、言動要件か迷惑要件のどちらかを満たせば、公的施設の利用制限が可能になっており、現在の実情を反映させた要件にするべきである

    ・川崎市の詰問機関のトップ(部会長)や川崎市の議員からも、迷惑要件を必須としたガイドラインは問題があるとして見直す声が出ている

    審査会の設置と会議

     今回のパブリックコメントを募集する前に、昨年都議会で可決・成立した条例に基づき、審議会が設置され、5名の審査会メンバーによる第1回の審査会が開催されています。その会議の中で、公的施設の利用制限に関する基準案についても議論が行われています。

    東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例第14条の規定により設置する審査会について

    ◆ 第1回(2019年1月9日(水)開催)

    【会議資料(PDF)】
    http://www.soumu.metro.tokyo.jp/10jinken/tobira/pdf/shinsakaishiryo1.pdf

    【議事録(PDF)】
    http://www.soumu.metro.tokyo.jp/10jinken/tobira/pdf/30_01gijiroku.pdf

     議事録から、北村聡子弁護士の発言を一部抜粋します。

    [北村聡子弁護士]

    私の意見ですけれども、利用制限の要件が、言動要件かつ迷惑要件となっていますが、2点ございまして、1つ目は、私は迷惑要件は不要であるという立場でございます。2つ目は、その代わりに、言動要件をもう少し明確にする必要があると思っておりまして、具体的にはヘイトスピーチが行われることにより、他人の人格権が侵害されることが客観的な事実に照らして具体的に明らかであると認められる場合には不許可とし、そこまで明らかとはいえないけれども、その可能性が認められるという場合には警告あるいはヘイトスピーチをしないという条件付許可というような段階で処分をしていくべきではないかと考えています。

    その根拠ですけれども、そもそもヘイトスピーチが行われるような集会を制限する根拠は何なのかということですが、まず地方自治法244 条1項が定める公の施設の定義として、住民の福祉を増進する目的で設置された施設であると、ヘイトスピーチを行うような集会というのは、地域を分断し、マイノリティの人格権を侵害し、その社会的地位を元から否定するというような集会ですので、その設置目的にそもそも反しているということが1点です。もう1つは、1995 年に日本が加盟した人種差別撤廃条約の2条と4条において、地方自治体が人種差別行為を後援したり、支持をしたりすること、差別を煽動・助長するような効果をもたらすようなことをしてはいけないということが義務として定められています。地方自治体にもそのような義務の履行が求められているという面があると思います。

    いずれにしても、泉佐野市の裁判例から迷惑要件を引用してきていると思われますが、迷惑要件を設定したのは、あくまで集会の内容自体は問題ないけれども、そうであってもなお混乱を生じるおそれがあるような場合に、集会の自由を制限できるのかというところで、この要件を設定したと考えています。今回の対立利益が、そのような紛争による生命、身体、財産ではなく、あくまでマイノリティの人格権というところにあって、場面が全く異なりますので、その異なる場面で定立された規範を言動要件にさらに追加すべきものではないということで、私は言動要件のみで足りるのではないかという考えです。

    実態の問題であともう一つは、迷惑要件をクリアしなければ、つまりAかつBという形でBもクリアしなければ、どんなひどい集会も開催されてしまうということになりますと、マイノリティの権利を守る立場から、何としてもその開催を阻止したいと思う人々が、毎回会館に押し寄せて、かえって騒乱状態を惹起するような、ガイドラインがその本来の役割に反するような残念な役割を果たしてしまうという可能性も、実態問題としてはあろうかと思います。そういった点からも私は、この言動要件だけで足りるという考えでおります。もちろんそれによって、要件が1つ外れるわけですから、正当な表現に対する萎縮効果というものがもたらされないよう、考慮しなければなりません。これに関しては、要件を明確化して、客観的な事実に照らして明らかかどうかということをしっかりと審査する、そのために第三者機関である我々審査会が設けられていて、適正手続を保障する。実態審査と適正審査というものを保障することで、表現の萎縮効果に対する低減を図っていくべきであって、迷惑要件をのせることによって萎縮効果に対して配慮するというのは、私は違うのではないかと考えております。

    参考

    あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)

    第4条 (c)国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと。

    https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html

    「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案」に対する声明 外国人人権法連絡会

  • 「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案」に対する声明 2018年9月26日 外国人人権法連絡会
  •  PDF版

    6.公の施設の利用制限の要件、効果、手続き等の基準を条文に入れる(11条)。

    6.「条例案概要」では、公の施設利用を不許可とする2つの要件(いわゆる言動要件と迷惑要件)の両方を充たすことが必要と明記されていたが、都条例案では要件が知事一任となっている。しかし、集会の利用制限は、憲法上重要な集会の自由の制限であるため、必要最小限の制限かつ公正な手続きによることが必要であり、過度の制限、濫用の危険性を防ぐため、都議会で議論の上、条文で定めるべきである。
    また、要件は、言動要件のみにすべきであり、仮に両方を定めるなら、京都府、京都市のように選択的にすべきである。両方を必要とした川崎市ガイドラインでは要件が厳しすぎて実効性を確保できないことがすでに明らかになっている。
    手続は、都民が審査を申請できるようにし、審査会(14条)の調査審議の対象とすべきである。

    「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」案に対する声明 2018年10月2日 ヒューマンライツ・ナウ

    http://hrn.or.jp/activity/14535/
    http://hrn.or.jp/wpHN/wp-content/uploads/2018/10/c7e7cad84e62d6035380cf7a119c4d33.pdf (PDF)

    4 公共施設の利用制限の要件は条例において定めること。またその際、いわゆる「迷惑要件」は不要とすべきこと

    都条例案第11条は、「知事は、…公の施設の利用制限について基準を定める」とする。

    しかし、公共施設の利用制限が、憲法が保障する集会の自由への制約であることに鑑みれば、議会は知事に利用制限の基準を白紙委任すべきではなく、議会による条例によって公の施設の利用制限に係る基準(要件)を定めるべきである。

    また利用制限に関する基準として、「使用申請者に施設を利用させると他の利用者に著しく迷惑を及ぼす危険のあることが客観的な事実に照らして明白な場合」などといった要件(いわゆる迷惑要件)は規定すべきではない。

    憲法が定める集会の自由の保障との関係で、上尾会館事件最高裁判例(最判平成8年3月15日民集50巻3号549頁)は、「住民等は,その施設の設置目的に反しない限りその利用を原則的に認められることになる」とし,他方,同調査官解説では,「利用の目的が当該施設の設置目的からみて不相当な場合に,これを拒否することに地方自治法244条2項の「正当な理由」…があるとすることには,異論をみないであろう」(「最高裁判例解説(平成8年)(民事篇)(上)」209-210頁参照)とする。また、いわゆる泉佐野事件最高裁判例(最高裁平成7年3月7日判決民集49巻3号687頁)の調査官解説(「最高裁判例解説(平成7年)(民事篇)(上)」282頁以下参照。)は「目的外使用等の場合に利用を拒否し得ることは当然であろう」としている(同解説290頁)。

    一方、人種差別撤廃条約は,地方公共団体が同条約上の「人種差別」に手を貸すことを禁じている。すなわち,人種差別撤廃条約第4条は「締約国は,世界人権宣言に具現された原則及び次条に明示的に定める権利に十分な考慮を払って,特に次のことを行う」とし,「(c)国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと」としているのである(なお我が国は人種差別撤廃条約第4条(c)を留保していない)。

    そもそも人種差別を目的とする集会は、地方公共団体の設置する公の施設の設置目的に合致せず、目的外使用を理由に利用を拒絶しうる事案と認められる。

    以上より、都条例では公共施設利用の消極的処分要件として「不当な差別的言動」が行われることが、客観的な事実に照らし、具体的に明らかに予測される場合(いわゆる言動要件)のみで足り、迷惑要件は不要とすべきである。仮に迷惑要件を設けるとしても、京都府の「公の施設等におけるヘイトスピーチ防止のための使用手続に関するガイドライン」(2018年3月)、京都市「ヘイトスピーチ解消法を踏まえた京都市の公の施設等の使用手続に関するガイドライン」(2018年6月)と同様に少なくとも選択的要件とすべきである。

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